最近、寝てもスッキリしない、いつも疲れてる、なんとなくイライラする、病院に行って検査したけど異常なし、そんな経験はありませんか?
それって、自律神経が乱れているのかもしれません。
日常何気なく使っている「自律神経」と言う言葉、実は知っているようで「そもそも自律神経ってなに?」って思われる方のために、今回は「自律神経失調症(自律神経の乱れ)の原因・症状・セルフケア方法」について解説していきます。
〇この記事は、当院(鍼灸院Revive)の患者様のお悩みやご質問の多い内容をまとめています。
目次
自律神経ってどんな神経?
神経には、
・自分の意思でコントロールできる「運動神経」や
・自分の意思ではコントロールできない「自律神経」などがあります。
例えば、歩く、何かを掴む、スマホを取り出すなど、したいことを「脳や脊髄から筋肉に指令を伝える」のが運動神経です。
自律神経は、
走ると心臓の鼓動が速くなったり、暑くなると汗をかいて体温を下げたり、ご飯を食べると消化・排便したりするなど、特に意識をしなくても体が内外の刺激を受けると「勝手に」反応して体の機能をコントロールしています。
自律神経は、循環、呼吸、体温調節、消化、分泌、排泄などの人が生きていくために欠かせない機能を担っています
交感神経と副交感神経
自律神経は、2種類あります。
〇活発に活動するときに働く「交感神経」
〇脳や体を休ませるときに働く「副交感神経」
交感神経と副交感神経のどちらか一方だけが頑張るのではなく、お互いのバランスがとても大切です。
交感神経-緊張
戦ったり、逃げたりする時に働く神経です。
戦うと言ってもイメージしづらいので、スポーツなどの対戦を思い描きながら読んでみてください。
交感神経が活発になると以下のような反応が発生します。
※以下のような反応が起きると交感神経が活発になっていることを意味します。
- 体の重要な臓器に血液を集中させるため、抹消の血管(手足の血管)は収縮します。手足の血管が収縮することで、手足がケガをしても出血しづらくしています。
- たくさん動くために血液が必要なので心臓が頑張って血液を送り出します。心拍数が上昇します。
- 血管収縮と血液量の増加により血圧が上昇します。
- 素早く動くために筋肉は、緊張します。
- 戦う時に食べたり消化することは不要なので、腸のぜん動運動は抑制されます。
- 緊張状態で手に汗握ると言うように、汗は増えます。
- 危険に備えるために精神状態は不安になります。
また、不安状態にあると交感神経が活発になります。
副交感神経-リラックス
副交感神経は、リラックスモードなので交感神経の働きの逆になります。
自律神経の乱れ、原因と症状
過度なストレスや不規則な生活が続いていると戦うための交感神経がたくさん働いていることになり、体も精神も疲れ切ってしまいます。
原因
日常生活において自律神経の乱れの原因となるものはたくさんあり、感じ方も人それぞれです。
人間関係のストレス
人間関係がストレスとなることは珍しくありません。会社、学校、家庭、友人など社会生活をいとなむことで、対人ストレスを感じている人は多いです。
生活習慣の乱れ
夜更かし、外食・コンビニ弁当などの偏った食事、運動不足などで生活習慣が乱れて体調を崩しやすくなります。
現代社会において、生活や仕事をする上でスマホ・PCは欠かせないものです。それ故に新しい技術に適応しなければならない不安や体調不良を引き起こす「テクノストレス」やスマホを片時も手放せない「スマホ依存症」により自律神経を乱すことが増えています。
特にスマホは寝る直前まで見ている人も多く、寝不足や浅い眠りの原因となっています。
季節の変わり目
自然環境の変化
季節の移り変わる時期は、気温・湿度・空気の乾燥・昼夜の長さ・日光の強さなど自然の環境変化が大きく、自律神経はそれらの変化に合わせて忙しく調整をしています。
社会環境の変化
自然環境の変化への適応だけでも十分忙しいのに、季節の変わり目には、卒業・入学・新学期・春夏冬休みなどの長期の休み・人事異動など社会環境の変化もあり、精神的ストレス、時に肉体的ストレスを感じる機会が増えます。
症状
自律神経は全身の器官の働きを調整しているので、バランスが崩れた場合、体の全身と心にさまざまな不調を引き起こします。
体の不調
倦怠感、疲れやすい、頭痛、微熱、食欲不振、睡眠障害・寝不足・眠りが浅い、朝起きるのがつらい、ほてり、のぼせ、喉のつまり感、生理不順、過敏性腸症候群(便秘・下痢・腹痛・腹部のはり)、過活動膀胱(頻尿・尿意切迫感)など
心や精神の不調
情緒不安定(イライラする、怒りやすい、気分が落ち込む、不安感、無気力など)、記憶力・集中力の低下など
自律神経のバランスを自分で整えましょう!
生きていれば多かれ少なかれストレスは誰にでもあるものです。しかし、ストレスが過大だったり長く続くと交感神経がずっと働き続けることになり疲弊してしまい心や体の不調となって現れます。
働いたり活動する昼間や平日は、交感神経が活躍し、
ゆったり休む休日や夜間は、副交感神経に任せる。
この切り替えが上手にできるメリハリのある生活を心掛けることが大切です。
特に大切なのは、心と体の不調・異変を感じたら、とにかく休む時間を確保することです。
ここで無理をしてしまうと回復するのに余計に時間がかかります。無理のし過ぎには注意しましょう。
仕事・勉強・イベント・お付き合いなどで生活リズムが崩れたとしても、一定期間(1日単位、1週間単位など)でバランスを整えるようにしましょう。
自律神経のバランスを整える方法をいくつかあげておきますので、ぜひできることから始めてみてください。
生活習慣の見直し
質の良い睡眠
- 朝起きる時間を一定にする。
- 6~8時間程度の自分に合った睡眠時間を確保する。
寝不足・寝過ぎは、生活リズムが崩れる一因となり自律神経の乱れに繋がります。 - 寝る直前のスマホを控える。
- お酒・食事は、寝る3~4時間前まで。
朝日を浴びる
人間の体には1日のタイマーがありますが、24時間ではなく人によって23~25時間程度と言われています。この1時間のズレをリセットするために朝日を浴びることが有効であると分かっています。室内のカーテンごしでも良いので朝起きたら5分程度浴びるようにしましょう。
朝日を浴びてから約15時間後に「睡眠ホルモンーメラトニン」が分泌されます。メラトニンが分泌されて1~2時間後に眠くなります。質の良い睡眠をとるためにも朝日を浴びましょう。
適度な運動習慣
激しくない軽めの運動は、運動後の副交感神経を活発にすることが分かっています。
また、運動を継続することで交感神経が抑制されて、副交感神経が活発になり、自律神経のバランスを整える効果があります。
心理面でも、軽い運動は、「不安・緊張、抑うつ状態」の改善に効果があると報告されています。
逆に激しい運動は、交感神経が活発となり、副交感神経は抑制されるので自律神経のバランス調整には不向きと言えます。
会話ができるスピードのジョギング、ウォーキング、ストレッチ、体操、ヨガ・ピラティスなどできそうな運動を見つけて習慣にしてみてください。
呼吸法
自律神経は、自分の意思でコントロールできないと言いましたが、呼吸はその例外となります。呼吸の仕方を変えるだけで、ある程度自律神経をコントロールすることが出来ます。
呼吸は、吐くときと吸うときで働く自律神経が異なります。
- 吐く - 副交感神経が働く、心拍数減少、筋弛緩
- 吸う - 交感神経が働く、心拍数増加、筋緊張
人は、不安や緊張で呼吸が浅くなり、リラックスすると呼吸はゆっくり深くなります。
肋骨を広げたり狭めたりして呼吸する「胸式呼吸」は、呼吸が短く浅くなります。
一方、お腹を膨らませたり凹ませたりして呼吸する「複式呼吸」は、呼吸がゆっくり深くなります。
気持ちを落ち着かせたい時、リラックスしたい時や寝る前などに、副交感神経が活発になる「複式呼吸」を行うのは、自律神経を整えるのにとてもお勧めです。
(方法)
- 鼻から吸って、口から吐きます。鼻から吐いてもOKです。
- 最初のうちは、おヘソからやや下あたりのお腹に手をあてながら呼吸すると分かりやすいでしょう。
- 息を吸うよりも吐くほうを長くします。吐いてる時に副交感神経が活発になるので吐く方を長めにします。
- 呼吸の時間を計ると緊張してリラックスできなかったり、息苦しさを感じたりするので、「吐く方を長めにゆっくりしよう」くらいのアバウトさでOKです。慣れてくると自然に吐くほうが長くなってきます。
コロナ窩でマスクを長い間つけていたこともあり、口呼吸になっていたり、呼吸が浅くなっている方が多い印象を受けます。
いつでもどこでも簡単にできますので、試してみてください。
ツボ押しマッサージ
ツボを押したりマッサージすると血流が改善されたり、ツボにつながる神経が刺激されて体調が整います。
(方法)
痛くない気持ちの良い力加減でツボをじわ~っと3~5秒かけて押します。ツボの周辺をグリグリとマッサージするのもお勧めです。
ツボの周辺の凝っている所や痛い所は、血流が悪くなっていますので、痛くないように優しくツボ押し・マッサージをしてみてください。
天柱・風池・完骨は、軽く上を向いて、ツボに親指を当てて、頭の重さを下から支えるようにしながらツボ押し・マッサージするとやりやすいのでお試しください。
合谷
人差し指と親指のぶつかる所から、人差し指の骨に沿って親指1本分くらい上にあります。
合谷は、万能のツボと言われています。
自律神経を整える以外にも、頭痛、肩こり、首こり、歯痛、便秘・下痢、鼻水、眼精疲労などいろいろな症状に効果があります。
天柱・風池・完骨は、自律神経を整える以外に目の奥が痛かったり重だるいような眼精疲労、頭痛、めまい、首・肩こり、引き始めの風邪などにも効果があるツボです。
天柱
頭蓋骨と首の間、下を向いた時に首の真ん中に盛り上がる筋肉の外側の凹み
完骨
耳の後ろ側のとがった骨のすぐ後ろ側の凹み
風池
天柱と完骨の間、筋肉と筋肉の間の凹み
それでも改善しなかったら
上記以外にも、香りを楽しむアロマや音楽や読書などでリラックスする方法もありますが、いろいろ試しても改善しない場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
鍼灸治療は、軽い刺激でも副交感神経を高めて自律神経を整える効果があります。
鍼灸治療は、治療方法の選択肢の1つとなります。
受診する医療機関の目安
めまい、耳鳴り ⇒ 耳鼻科
ふらつき、吐き気 ⇒ 脳神経内科、内科、耳鼻科
排尿、排便の不調 ⇒ 内科
臓器検査で異常なし ⇒ 心療内科
ストレス ⇒ 心療内科
鍼灸治療
鍼灸治療は、自律神経を整える効果があることが分かっています。軽い刺激の鍼でも副交感神経を高めて自律神経のバランスを整える作用があります。
ストレスなどで自律神経が乱れて交感神経優位になると筋肉は硬くこりやすく、抹消血管は収縮して血流が悪くなります。自律神経が乱れていると首・肩・背中にハリやコリを感じることが多いです。これらの部位を治療して血流を改善することでもストレスが減り、副交感神経が活発になり、自律神経が調整されます。鍼灸治療は、交感神経から副交感神経への切り替えを促す治療とも言えます。
自律神経の乱れが強い場合は、強い刺激の鍼治療や強い電流のパルス治療を行うと症状を悪化させてしまうこともあります。刺激量については、鍼灸師の先生と相談してみてください。