この記事では、脊柱管狭窄症とその治療方法について記載しています。
目次
脊柱管狭窄症とは
脊柱管は、背骨の中にある神経が通るトンネルのような管のことです。
加齢による椎間板、椎間関節、じん帯の変性、病気、事故などの外傷などで脊柱管が狭くなった状態が「脊柱管狭窄」です。
- 脊柱管が狭くなることで、
- 中を通る神経が圧迫を受けて、
- 神経の血流が悪くなり、
- 脊柱管が狭くなった所から下の下半身に痛みやしびれの症状が発生します。
このような症状がある状態を「脊柱管狭窄症」と言います。
脊柱管狭窄症は、50~60才以降に多く、高齢化が進んだ現代社会において増加傾向にあります。
症状
脊柱管狭窄症になると、歩いてしばらくすると、お尻、太もも、ふくらはぎなどに痛みやしびれが生じて歩きづらくなります。
腰の痛みはあまり強くありません。
少し休むとまた歩けるようになる場合が多いです。
これを「間欠性跛行」と言います。
これらの痛みやしびれが強くなるのは、立ったり腰を反らしたりすると、神経の後ろの黄色じん帯がたわみ神経がより圧迫されるためです。
前かがみになって休んだり、腰掛けたり、少し前かがみになって歩くと痛み・しびれが軽減されるのは、神経への圧迫が減るからです。
進行すると、下肢の力が落ちたり、肛門周囲のほてりや尿の出が悪くなったり、逆に尿が漏れる事もあります。
主な症状
- 腰の痛み
- お尻から足にかけての痛みやしびれ
- 間欠性跛行(かんけつせいはこう)
- 足の脱力感
- 頻尿、残尿、尿失禁(尿漏れ)、尿閉(尿が出ない)などの排尿障害
- 便秘
下半身の痛み・しびれを生じさせる「腰部の脊柱管を狭くしてしまう動き」には以下のようなものがあります。
- 腰を反らせる
- 上半身をねじる
- お腹を突き出して歩く
- 無理に良い姿勢で長時間立つ・歩く
- 仰向けで寝る
筋肉を軟らかくするためのストレッチは有効ですが、痛みやしびれを強くしてしまったり、腰を反らすようなストレッチは逆効果ですのでご注意ください。
似た症状の病気
脊柱管狭窄症以外でも、脊柱管狭窄症と似た症状(痛みやしびれ、間欠性跛行)の病気があります。
椎間板ヘルニア
「椎間板」は、背骨の骨と骨の間にあり衝撃を分散吸収するクッションの役割を果たす(コラーゲン)線維軟骨で、
中に「髄核」というグミのようなゼラチン状の物質が存在します。
椎間板が、加齢などによって変性、断裂して、中の髄核が出てきて脊髄神経を圧迫した結果、腰・お尻~下半身に痛み・しびれなどが発生します。
末梢動脈疾患
抹消動脈疾患は、血管の病気です。
主に下肢の動脈が狭くなったり詰まったりして血流が悪くなり、痛みやしびれなどが発生します。進行すると間欠跛行などの症状がみられることがあります。
重症化すると足を切断しなければならなくなることもあるため、早期発見・治療が重要です。
糖尿病性神経障害
糖尿病で最も多くみられる合併症のひとつです。神経が障害されることで足のしびれや痛みなどの症状がみられ、進行すると手指のしびれや痛みなどもみられるようになります。糖尿病にかかっていて、下肢のしびれや痛みがある場合には注意が必要です。
糖尿病は、初期症状がほとんどないため、定期的な健康診断が欠かせません。自覚症状として以下のような症状に気付いたら医療機関を受診することをお勧めします。
- 喉が渇く、尿が多くなる
- 疲れやすくなった、だるさがある
- 食べているのに痩せる
治療方法
病院
病院では、先ずは保存的治療から始め、保存的治療の効果が不十分の場合に手術を検討します。
保存的治療では、脊柱管が狭くなることで神経を圧迫して炎症や血流不足が生じていますので、消炎鎮痛剤・血流改善薬や神経障害性疼痛薬などが処方されます。
鍼灸
当院では、現代医学的鍼灸と東洋医学的鍼灸のミックス治療を行っています。
脊柱管が狭窄して神経を圧迫することで血流不足となりますが、その周りの筋肉・腱・皮下組織なども血流不足となっています。また、常に筋緊張が続いている状態にあります。
鍼には、血流促進・筋肉の弛緩・疼痛抑制などの効果がありますので、脊柱管狭窄症の症状の緩和・改善に適した有効な治療です。
現代医学的鍼灸治療
狭窄の生じている腰周辺だけでなく、痛みやしびれが生じている下肢の神経の走行上の有効なツボに鍼治療を行います。
また、鍼に微弱電流を流して効果(血流促進・筋肉の弛緩・疼痛抑制等)を高めています。
東洋医学的鍼灸治療
痛みやしびれが発生している部分にフォーカスして解剖・生理学的見地から治療する現代医学的鍼灸にプラスして、本来備わっている自然治癒力を高めるために全身の状態を確認して、各人に適した全身調整治療を行います。
ワンポイント
脊柱管狭窄症の場合、前述したように無理に良い姿勢で立つことは、腰を過剰に反らせることになり避けるべきですが、脊柱管狭窄症になると前かがみの姿勢が楽になることから、無意識に前かがみになり、猫背姿勢になっていることが多く見られます。
この前かがみの姿勢は、狭窄した腰部には負担軽減となりますが、5~6kgある頭が前方に出ることから、重い頭を常に支え続けることになり、頸椎や上部胸椎にとってかなりの負担となります。
当院では、脊柱管狭窄症の治療において、脊椎全体の柔軟性を取り戻すことを意識して椎骨一つずつの可動域を上げる治療を行っています。
腰部狭窄部分の組織が、回復・改善するにつれて立位姿勢が整っていきます。
筋肉に余計な負担をかけずに「骨で立つ」ことができるようになり、立位だけでなく座位の姿勢も骨盤が立ちやすくなり、疲れにくい体に変化していきます。
姿勢の改善が目的ではありませんが、治療効果の目安として患者様と画像を共有しています。